「ママは…実は男性だ。」
その発言にママは目を丸くした。
そうだ、すべて思い出した。このスナックのママのヒミツ、それは他国からのスパイということである。
自分はこの人を捕まえるためにずっと追っていた。しかしこの店にいるという情報はつかんでいたが、どういうわけかここへ潜入するといつも記憶が消えてしまうのだ。
ただ…、ここでエージェントだとママに伝えることはリスクが高すぎる。逃げられてしまっては元も子もないのだ。確か機密情報にもスパイは男性であると記されていたはずだ。
「あら~やだァ…ママの大事なヒミツ暴かれちゃったわ♡あなた本当に優秀なのね。」
ママは恥じらうように両手を頬にあてて照れた様子を見せている・・・。
「恥ずかしいわ~あなたの勝ちね。しかたないわ、あなたの大切な警察手帳返してあげなくちゃねェちょっとまってて、奥にあるからとってくるわね。」
そういってママの姿はカウンターの奥へ行って見えなくなった。その隙に電源の切ったラインを再起動して仲間へ突入の連絡を取る。
すでに店の裏口と表口は塞いでいる、逃げ道はない。これで仕舞いだ、この人はこのまま署に連れていこう。
自分の役目はこれまでだ…なんとも不思議な出来事だったな、カウンター奥のほうから物音がして目をやると注意して突入してきた警察官と目が合う。そこへ表口から入ってきた警察官たちが緊張した面持ちで鉢合わせた。
「おい、工作員はどこへ行った…」
なんだって、脱出経路を用意していたのか…?カウンターの裏へ回ると無くした警察手帳がきれいに置かれていた。中には手紙と同じ筆跡で「楽しかったわ、アリガト♡」と書かれていた。 スパイは取り逃してしまった・・・しかし自分の仕事は完璧だった、ママ…またいずれどこかで。
スナック 愛 ~ママ{愛一郎}のヒミツ~
ENDING 2/2.【ジェントルマン】
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